もう、キスだけじゃ足んない。


「前にも言ったけど、この撮影が終わったらすぐにライブの準備が始まるから、今度は2ヶ月近く、文化祭のとき以上に忙しくなる」


に、2ヶ月って……。


「すぐって、いつから……?」

「明後日から」

「明後日から!?」

「ごめんな」


思わず出てしまった素っ頓狂な声に、ますます遥の声が小さくなった気がした。

今以上に忙しくなる。

同じ家に住んでるけれど、もしかしたら、会えない日だって何日もあるかもしれない。


「……」


込み上げてくる熱いものをグッと堪えて我慢して。

遥の胸板を押して、ゆっくり離れる。


「胡桃……?」


何も言わない。心の声も聞こえないように、黙っている私に、遥の瞳が不安そうに揺らめいてるけれど。

その瞳の奥で、隠せていない。

燃えるほどの熱と独占欲が渦巻いている。


ほしい。

大好き。

かわいい。

俺のものにしたい。


「さっきの質問の答え……」

「え……?」


「男の人が女の人に服をって、いうの……」

「うん……」


ぎゅっと握りこんだ手のひらにはじんわり汗が滲んで。

緊張で鼓動がものすごい速さで波打ってる。


「プレゼント、して……」

「え?」


「今私が着てるみたいなの……」

「っ!それ、は……」
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