もう、キスだけじゃ足んない。


「遥……」


ライトアップされた空間の中で、まるでこの世界には私たちふたりだけかのように、強く抱きしめ合って。


「ぜんぶほしい」

「うん……」


「ずっと思ってた……胡桃を好きになったときからずっと」


交わる瞳はゆらゆらと揺れて。

一瞬フッと目を閉じた遥は、緊張の糸がとけたように、ふわっと笑った。


「せっかくこんな格好してるし、雰囲気も……」

「え……?」


それってどういう……。


「お嬢様」

「っ!」


驚く私に、遥は私の手をとると、スっと跪いて。


「私に、お嬢様のすべてをくださいますか」

「っ……」


そっと指輪にキスが落とされて、射抜かれちゃうんじゃないかってくらい、真剣な顔で見つめられたら。


「お嬢様……胡桃」

「はい……っ」


もう自然と口が動いて、強くうなずいた瞬間。


「胡桃……っ!」

「きゃっ……!?」


グッともう一度強く抱きしめられて、コツンとおでこがぶつかる。


「もう、我慢できない」

「あっ、ちょっ、遥……!?」

「このまま部屋行く」


い、今から行くの!?

このまま!?


「当然。もうずーっと我慢してたから」

「っ!!」
< 232 / 323 >

この作品をシェア

pagetop