もう、キスだけじゃ足んない。


「胡桃も」

「うん?」

「寂しいのはあたしも同じだから。住んでる部屋は別だけど、いつでも遊びにおいでよ」


「うん、ありがとう桃華」


「それに、ライブが終わったら、またいつもの生活に戻るよ!それまでの辛抱!」

「そう、だね……」


「はぁ……ふたりが最高にリア充してて、本当筆が捗るわー」

「そこは、羨ましい、じゃないのね、あすみ」

「まあね。いつかはって思うけど、やっぱり推しを追いかけてる時間が最高に楽しいから!」


「あーちゃんらしいね」

「っていうか、桃華!」


「な、なに?」

「はぐらかしても無駄よ〜?
一から十までぜーんぶ話してもらいますからね!」


「えっ、なにを……」

「決まってるでしょー!?もちろん、杏くんとの、ア・レ、よ!ぶっちゃけた話どうだった!?杏くん、優しかった!?」


「あ、あーちゃん……」

「ぶっちゃけすぎでしょ、あすみ!」


今すぐここからいなくなりたい。

聞いているほうが顔から火出そうなんだけど……。

自分の姉と自分の彼氏の兄、まあ、幼なじみなんだけど……。

ずっといっしょだったふたりのそういう話を聞くの、めちゃくちゃ生々しい……。


「ぶっちゃけ……?」

「そう!ぶっちゃけ!」


「んー、杏って、見た目めちゃくちゃ王子様っぽいじゃない?優しそうというか、お姫さま扱いしてくれそうな……」

「んー、まあ、そうね……ってことは、ちがうの!?」


なんだこれ……聞きたくないのに、聞きたい。

話しているのは桃華なのに、なんで私がこんなはずかしい思いしてるんだろう……。


「もちろんたくさん気遣ってくれたし、めちゃくちゃ優しくはしてくれたとは、思う」

「うんうん、それで!?」

「けど、杏……」


「うん!?」


「正直新しい扉開きかけたっていうか、めちゃくちゃ雄みが強……〜〜っ、もう、おしまい!」

「ええええーーーっ!?
今からがいいとこなのにっ!?」
< 242 / 323 >

この作品をシェア

pagetop