もう、キスだけじゃ足んない。


「……たい、」

「え……?」


「今すぐそばに行って、抱きしめたい」

「はる……」

「ずっとそばにいて、抱きしめて、俺はずっと隣ににいるよって、言いたい」

「はる、か……」


「会いたい。そばにいたい。離れたくない」

「彼氏なのに。泣かせてばっかで、ごめんな」


胸が張り裂けそうなくらい苦しい。


痛々しい、泣きそうな声。

遥にこんなこと、言わせたくなかった……っ。


大丈夫って言いたいのに、言えない。

強くいて、笑って支えてあげたいのに。


積み重なる言葉の暴力に、心はもうとっくに限界を超えて。

食欲がなくなるくらい。

遥の前で、大丈夫だって言うことも、笑うことも、できないくらい。

心が悲鳴を上げていた。


「やっぱ声聞くだけじゃ、だめだな」

「え?」

「顔、見たくなる」

「っ……」

「テレビ電話にしていい?」

「い、今顔ぐしゃぐしゃだから、」

「気にしなくていいのに、そんなの。
俺はどんな表情の胡桃も好きだから」

「っ……」

「寂しい?」

「うん……」

「言って、言葉にして」

「寂しい、よ……」

「俺に会いたい?」

「会いたいよ……」

「俺と離れたくない?」

「離れたくない……」

「ずっといっしょにいたい?」

「いたい、よ……っ」


押さえ込んでいた弱音と本音をすべて言葉にさせられたら。

もう、とまらない。

涙が今度は波のように激しく襲ってくる。


「俺も。片時も離れたくないし、四六時中一緒にいたい。もう、ずっと……胡桃も?」

「うん……」

「わかった」

「はる、か……?」

「ん、なんでもないよ」


なにが、わかった、なんだろう……。
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