もう、キスだけじゃ足んない。


「とにかく。我慢しないでいいから」


「っ!!」


「電話は無理かもしれないけど、メッセージでもなんでも……あ、ボイスメモは特に大歓迎。写真とか」


「……それって、遥が送ってほしいやつだよね?」


「あ、バレた?」


もう……っ。

クスクス笑う遥に、凍りついていた心にほんのり火が灯る。


「電話、このままにしとこう」

「え?」

「このまま繋いどくから」


「えっ!?でもお仕事は……」


「もう終わったから、大丈夫」


「ごはんとか、お風呂とか……」


たぶん絶対まだだよね……?


「胡桃以上に大切なことなんてないから」


「っ、でも明日も忙しいだろうし、ちゃんと休んだほうが……」


「胡桃」

「っ、はい……」


その気持ちだけで十分だよ。

そう言おうとした言葉は、有無を言わさない声に遮られてた。


「素直に言うこと聞いてくれないと、俺、清見に何するか分かんないよ。この間のこと、まだ根に持ってるし」

「えっ!?」

「明日には清見、この世にいない……」

「わ、わかった!分かったから!
お願いだから、清見さんには何もしないで……」


いつぞやの遥が思い出されて冷や汗が出てくる。

ただでさえ、ふだんから清見さんへの当たり、めちゃくちゃ強いし……。
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