もう、キスだけじゃ足んない。
「あ、えっと、」
苦笑いで運転席から顔を出した姿に、慌てて離れようとするも。
「俺から離れたらだめ」
「えっ、ちょっ、」
「はぁ……ほんっと落ちつく。好き、大好き」
「遥……!」
ふわっと抱き上げられて、そのまま引き寄せられて、首に顔を埋められて。
うれしいけど、私だってこうしてたいけど……!
あとでどれだけしてもいいから、今は……。
いくら周りに人がいないとはいえ、学校も近いし、ちょっと離れてほしいな、なんて……。
「言ったな?」
「へ?」
「言質とったからな?」
「え、なに……」
「あとでなら、どれだけしてもいいんだもんな」
「っ!?」
あ……な、き、聞こえて……!?
「久しぶりに会うから、心の声聞こえるの、忘れちゃってた?かわいー……ほんとにかわいい」
ま、言われなくてもたっぷり甘やかしてあげるつもりだったけど、なんて。
「あの、えっと、」
「大丈夫。久しぶりだし、胡桃のペースに合わせるよ。いろいろとね?」
「ううっ……」
そっとおでこにキスされて、たっぷり甘さを含んだ瞳がやわらかく細められて。
「遥、甘すぎ……っ」
「好きな子相手だから当たり前。
つか、あとでもっともっと甘くなる予定だから、心の準備しといて」
「ううっ……」
「かわいすぎ」
胸に顔をうずめるしかできない私の頭をポンポンなでてくれる。
顔から火が出そう……。
遥とずっとこうしたいと思ってたのに、久しぶりすぎて、心臓とまっちゃいそう……。
「いやー、こっちが赤面するくらいのラブラブっぷりですね、桃華さん」
「ほんとですねぇ、あの甘さももっとあたしたちにも出してくれてもいいんですけどねぇ、解説の杏さん」
「おい、いいとこで口挟むな」
「はいはい、わかったわかった。
ふたりが存分にイチャイチャしたいのはもう十分わかったから。けど千歳っちのことも気にしてあげて」
「は、清見がなに……」
「……」
清見さん、目、死んでません?
笑ってはいるけど、ますますげっそりした気がするよ……。
「じゃあとりあえず!
今は車乗ろっか!ふたりとも!」