もう、キスだけじゃ足んない。

【遥side】


「胡桃、胡桃」

「んー……」


あー、だめだこれ。

何がだめって、俺の理性。


「一旦下ろすよ」

「……」


何も返事はない。俺の首に抱きついたまま。

それから俺たちの部屋へと戻ってきて、彼女を寝かせようと、ベッドへ。

とりあえず、横にならせて、水飲ませたほうがいいよな。

「胡桃、胡桃」

ポンポン優しく背中にふれて、腕を離すように促すけれど。

「……」

ぎゅうっ。


「っ……」

くそかわ……っ。

まるで離れたくないって言ってるみたいに、ますます腕に力がこもるから。


「胡桃?どっかつらい?」

「……」
『……』

「もし口で言いづらいなら、心の声でもいいから、声聞かせて」

心の声も、何も聞こえないから心配になる。

俺が知っている限り、胡桃がお酒を飲んだのは今が初めてだし、もしかしたら気持ち悪いとか具合が悪いのかもしれないし。


「胡桃」

「……」


とりあえずベッドへ座ったのはいいものの。


どうしたものか……。

こんな、離れたくないって言ってるみたいに抱きつかれるのは初めてで、体調を気にしなきゃって気持ちの反面、この状況をもっと噛みしめたい。

なんて、頭の中で俺の中の天使と悪魔が囁く。


胡桃の細い腰に手を回したまま、そっと視線を落とす。

シャツの裾からのぞく、真っ白な太ももがまぶしすぎる……。

ただでさえ、ショーパンでこう……えろいって言うのに。

こんな形で長年の俺の夢が叶うだなんて。

胡桃が今着ているのは、紛れもなく俺のワイシャツ。

彼シャツって言うの?男のロマンじゃん。


いつか着てほしいなって思ってたけど、まさかこんな状況で叶うとは。

久しぶりに会えたと思ったら、まあ……酒飲んじゃうハプニングはあったけど、彼女から甘えてくれて、俺の服まで着てくれて。

幸せ……理性云々よりも、そっちの気持ちの方が満たされていく。


「そのままだったら腕きついだろ?
もう寝ちゃってもいいから、横になろ?」


正直この間のお預けの続きをしたかったし。

それはもうめちゃくちゃしたかったし、やっとできるかもって楽しみにしてたから、残念ではあるけど。


今は体調を優先しなきゃいけない。

あんな強い酒飲んで、ふつうでいられるわけないし。


とにかく早く横に……そう思って、もう一度頭をなでたときだった。


「遥」

「なに……っ、うおっ! 」
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