もう、キスだけじゃ足んない。


名前を呼ばれて、一瞬体の力が抜けたその隙に。


「おいっ、胡桃っ!?」


だからこの体勢はまずいんだって……!!

グッと肩を押されて、気づけば背中にはやわらかいシーツ、視界は天井と。


「遥……」


頬を上気させて、グッと顔を近づけてくる胡桃の顔。


ほんっと無理!まじでやばい。

グッとのしかかられてるから、やわらかいところ当たってるし、シャツのボタンからちらりと白い胸元がのぞいて、勢いよく視線を逸らす。


「遥……」

「胡桃……っ、ん!?」

『遥とのキス大好き……もっとしたい』

「待てって……っ、」

「んん、はる、か……っ」


押し倒された、すぐあと。

俺の口を塞ぐように、何度も何度もキスをしてくる胡桃。


「一回落ちつけ、胡桃……っ、!!」

「っ、はぁ」


なにこれ……すっげえ甘いにおいする……桃?

酒を飲んだあとにも関わらず、甘いにおいに頭がクラクラする。


「はる、か……っ」

「っ、胡……っ!?」


ちゅうっ。

っ、なに!?


唇が離れたと思った瞬間には、首筋に吸いつかれて。


「痕、ついた……」
『私の、もの……』


「っ!!」


さらりと頬に落ちる髪を耳にかけながら、息を荒げて、長いまつ毛を震わせて。

そっと俺の首筋をなでる胡桃は、いつもの姿以上に、大人っぽくて、扇情的で。


「はる、か……っ」


上気した頬、真っ白な肌、潤んだ瞳、濡れた唇。

俺のものだと強く実感させられる、ダボッとした服。

そして、砂糖を煮詰めたような甘い声で名前を呼ばれた瞬間。


「────ッチ」


プッツンと俺の中の何かが切れた。
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