もう、キスだけじゃ足んない。
私もさっさと寝よう……。
でも、その前に……。
『抱きしめられてる感覚になるよね!』
さすがに本人がいないところでそれは……と思っていた。
やっと明日には会える。
けれど、私には果てしなく遠い未来に見えて、何より一人になる夜は、いつも恐怖で押しつぶされそうになる。
今だけ。許して、遥。
そっとキャミソールの上からワイシャツを羽織る。
『胡桃。好きだよ』
遥……。
抱きしめられてるわけじゃない。ここにいるわけない。
でも大好きで安心するぬくもりに包まれているような気分になって、恐怖で震えそうになる気持ちが少し和らぐ。
明日はいよいよ遥たちのライブ。
無事成功しますように。
そして、無事に遥と会えますように。
いつもならなかなか寝つけないはずなのに、布団に入ったとたん、すぐに眠気が襲ってきて、ゆっくりゆっくり夢の中へと落ちていく。
ブーッブーッ……。
遠くでスマホが震える音にも気づかないまま。
遥……。
私は夢の中へと溶けていった。