もう、キスだけじゃ足んない。


シーンと静まり返った部屋の中で、自分のものとは思えないほどの、甘い声が響く。

「んんっ……や、」

「声我慢しないで。
もっと聞かせて」


咄嗟に口を押さえた手は、すぐに絡めとられて、シーツに押しつけられる。


「……かわいい。
もっともっと、気持ちよくなろうな」

「っ、ぅ……は、」


下へ下へと落ちていく唇。ふれる熱い指先。


「大丈夫?痛くない?苦しくない?」

「ん、へい、き……っ」

「ん、よかった……続けるよ」

「ぅ……あ、」


一つ一つ、ゆっくりゆっくり暴かれていく。

溶ける。溺れる。

何度も体が跳ねて、甘い声が抑えられない。


「ふ……ぁ、ぅ、」


はずかしさと、気持ちよさと。

愛おしい、溢れる好きに、ぽろりと涙がこぼれる。


「ん、気持ちいいな。
一回休憩。キスしよっか」

「ん……っ、は」


落ちた涙を伝って、なだめるようにまぶたに口づけられて。

大丈夫だよ、好きだよって。

ふわふわ頭をなでられながら、何度もふれるだけのキスが落ちてくる。


「っ……ぅ、あ」

「っ……ごめん、痛い、よな、」

「ぅ……ちが、ちがく、て、」


痛みよりも、苦しさよりも。


「す、き……」

「っ!!」

「好きなの、はる、か……っ」


ずっとほしかった、甘すぎる熱。

やっと、やっとだって思ったら、お腹の奥が疼いて、たまらなくて。


「……っ、やぁ……っ」

「はぁ……ごめん、もっと、」


───胡桃のこと、感じてたい。


何度も何度も名前を呼ばれる。

押し寄せる熱と快楽に、放り出されて、落ちていく。


「ぎゅっと、して、」

「っ……」


シーツの上で絡められた両手はすぐに解かれて。


「っ、は……くる、み……っ」


揺れる視界の中で、じんわりかいた汗とオレンジの香りに強く抱きすくめられた。


「好き、好きだよ……っ」

「かわいい、すっげえかわいい、」


もっと、もっとって、求められて。

何度も何度も、言葉で、全身で、愛を伝えられて。


「───……愛してる」


最後に聞こえたのは、最大級の愛の言葉だった。
< 295 / 323 >

この作品をシェア

pagetop