もう、キスだけじゃ足んない。


「っ、ううっ……」


プツンと生配信が終わって、画面が真っ暗になっても、私の涙はとまらなかった。


はる、か……っ。

遥……っ。


胸が苦しい。痛い。

遥が好きで、好きで、好きで。

愛おしくて。


会いたい……私のためにここまでしてくれて、ここまで言ってくれた、遥に……っ。


ブーッブーッ……。

だれ……もも、か……?


「……もしもし」

「胡桃!!生配信見てた!?」

「うん、見てた、よ……っ」


とまらない涙を拭って、なんとか桃華の電話に応える。

けれど、桃華の声もどこか震えている気がした。

「今から、出られる?」

「えっ……?」


「遥に会いたい。
胡桃、今そう思ってるんじゃないの?」

「桃華も?」


「うん!だから行くよ!ふたりのところに!」

「うん……っ!」






***



それから桃華のマネージャーさんの車に乗って、急いで会場へとやってきた私たち。


「うそだよね……bondが解散なんて」

「彼女のためにって……つらすぎるよ」


窓から見える、出入り口から出てくる子たちはみんな、目を真っ赤にして泣き腫らしている子ばかりで。

けれど。


「私もつらい……でも、」


──────彼女のためにここまでできるなんて、私はすごいと思ったよ


泣きながらも、応援して良かったって笑う女の子もいた気がした。
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