もう、キスだけじゃ足んない。
遥と胡桃
【胡桃side】
それから手を引かれて、隣の部屋にやってきた瞬間。
「胡桃」
「はる……んんっ、」
くるっと私へと向き直ったと思ったら、噛みつくようなキスが落ちてきて。
「っ……ぅ、あ、」
「っ、は……」
ぎゅうっと抱きしめられた腕の中で、足が震えるくらい激しい口づけが、何度も何度も落ちてくる。
「はる、か……っ」
「好き、好きだよ」
「はる……」
「大好き。すげえ好き」
「はる、か……」
体が仰け反るくらい、強く強く抱きしめられて、私も目を閉じてぎゅっとその広い背中にしがみつく。
遥……遥……っ。
「ごめん。
胡桃に相談しないまま、勝手に決めて、また泣かせてごめん、」
震えた声。ますます力がこもる腕。
「はる、か……」
泣いたせいで、頭がくらくらになりながらも、掠れた声で名前を呼べば。
「くる、み……」
今にも泣きそうなくらい優しい顔が、私を見つめていた。
「聞かせて、遥の話」
そっと頬へと手を伸ばせば、私の存在を確かめるようにその手に自分の手を重ねて。
「うん」
何度も流れ落ちる私の涙をそっと拭ってくれた。