もう、キスだけじゃ足んない。
「さっきの、曲……」
「うん。あの曲は、ふたりを想って書いた曲だった」
よかった……届いたんだ。
そう言ってとびきり嬉しそうに笑う遥に、また体の奥底からぐわっと何か熱いものが込み上げてくる。
「いっぱい泣かせて、我慢させて、本当にごめん。
俺たちのファンのことも、」
「ううん」
つらかったけど、たくさん泣いたけれど。
遥を好きだって気持ちは、私をここまで連れてきてくれた。
「俺のこと、今日まで支えてくれて、家で待っててくれてありがとう。胡桃のおかげで、胡桃がいたから、ここまで頑張ることができた」
「遥……」
「もう二度と寂しい思いはさせないし、二度と離れない。これからは一緒にいられる。毎日朝から晩までずっと」
「うん……」
「bondの弓削遥としてじゃなくて、今度からは正真正銘、胡桃の幼なじみとして、彼氏として、婚約者として、隣に立てる」
「うん……あっ、」
「うん?」
「そ、そういえばなんで婚約者だなんて言っちゃったの!?」
こんなしんみりとした空気の中だけれど、遥の言葉で今思い出した。
最初は彼女、としか言わなかったから、婚約者だって言ったときはさすがにびっくりして……。
「公に認められるチャンスだったし、これで胡桃に近づく男は一切いなくなるだろ」
「えっ!?」
「はぁ……これで邪魔者はいなくなったし、朝から晩までずっと一緒とか、本当に幸せ。最高すぎる」
「えっ、ちょっ、遥!?」
ぎゅうっと抱きしめられて、思わずビクッとする。
どうしたの!?
なんか急に雰囲気が甘くなったんだけど!?
「あ、そういえば」
「ん?」
「体、平気?」
「なんのこと……って、ああああ、!」