もう、キスだけじゃ足んない。


「いろいろバタバタしてて、すっかり忘れてたんだけど、胡桃の心の声、実はあの夜から聞こえなくて」

「えっ……どうして、んっ、」


私を不安にさせてしまったことを気にしているのか、話しながらも、遥は首に鎖骨に唇を落とす。


「自分でもなんでかわかんないんだけど……でも、」

「う、ん……っ」


く、くすぐったい……っ。

今度はちゅうっと耳に口づけられて、ビクンと体が跳ねて。


「胡桃といつもこうしていられるから、心の声がなくても、ぜんぜん平気だよ」

「ふっ……ぅ」

「っ、かわいい」


プラス、そっと太ももの外側をなでられたら、甘い声が抑えられない。


「心の声がなくても、もうとっくに、胡桃が何を考えているかはわかるから」

「うん、私、も……っ」


心の声が私たちにいろんなことを教えてくれた。

甘いことも、苦しいことも。

でももう、大丈夫。

心の声がなくたって、私たちはずっと一緒だから。


「それに、俺が存分に愛を伝えればいいんだし」

「っ……もう十分伝わってる」

「だーめ。
まだまだ足りない。俺の伝える、はこんなもんじゃないよ?」

「っ、ううっ」

「ってことで、選んでくれる?」

「え?」

「俺にめちゃくちゃにされるか、とろとろになるまで甘やかされるか」

「えっ!?」


いつぞやに聞いた質問。


確か、文化祭が終わった日の夜。

遥の心の声が聞こえなくなって、私の心の声が遥に聞こえるようになったあのとき。


「どっちがいい?」

「あぅ、えっと、」


なんて答えたらいいの……!

そう思って、視線をさ迷わせたときだった。


『困らせてる。ごめんな、胡桃』

っ!?

『けど聞きたい、胡桃の口から。
前も答えてもらえなかったし、俺に何してほしいのか』
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