もう、キスだけじゃ足んない。


えっ、えっ、えっ、えっ……!?

ええええーーーっ!?

ちょっと待って!?


『あー、ほんとかわいい。
ぜんぶがかわいい』

「こ、声……っ、」

「声?」

「あっ……」

やばいやばいやばい!

デジャブ!!

『声が何?あ、俺の声か。
俺の声一つで可愛くなっちゃうの、ほんと好き。大好き』

なんで、なんで、なんで!?

なんでまた!?

制服もはだけて、こんな最中というのに。

慌てふためく私を、遥ははずかしいから私がこんな風になっていると思っているのか、優しく頭をなでるだけ。

『もう目もこんなにとけてるし……正直どっちでもいいんだけど、胡桃が俺にふれられて、こんなになってるって思うだけで、もう頭ん中ぐちゃぐちゃ……』

「ぐ、ぐちゃぐちゃ?」

「え?」

「あっ……」

「……」

「……」


「『……え、まじで?』」


あああああ!

やっっってしまったああああ!


「あっ、あのね、これはねっ、」

「へえ?また俺の心の声、聞こえるようになったんだ?」

「っ!!」


もうごまかしようがない。

とたんにすべてを理解したように、ニヤリと笑った遥に、ゆっくりゆっくり押し倒される。


「まっ、待って……!」

「待たない」
『やっぱめちゃくちゃにするは、ナシ。
可愛い声抑えきれなくなるまで、とろとろになるまで溶かしてあげたい』

「っ!!」


その瞳の楽しげなこと。

逃げようにも、逃げられない。

もちろん、私の上に遥が覆いかぶさっているから。


「さっきの質問、時間切れ。答え聞いてないけど、
とろとろになるまで、甘やかしてあげるに決めた」
『てかもう、俺が無理。
お預けくらってるみたいで我慢できない』


「あの、遥……っ、んんっ、」


「っ、は……明日も明後日も、これから先ずっと、もう嫌って言われても甘やかしてあげるから、覚悟して」


────もうキス以上のこと、とまんないから。


そう言って、この世の甘いものすべてをかき集めたような声で囁いた遥は、私に口づけた。


「っ、はぁ……」


遥の腕の中で、ゆっくりゆっくり思考が溶けていく。

でもこの時の私は、まだ知らない。


『好き……もっと、もっと……朝まで愛したい』


まさかこれを期に、これから一生遥の心の声が聞こえて、遥に翻弄されるだなんて。



Fin*.+゚
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