もう、キスだけじゃ足んない。
「俺の叫んでることは……」
「わかった!
もう十分わかったから!」
言わなくても、遥の考えてることはもうわかったから!
なんとなく言おうとしていることが分かった気がして、背筋に冷たいものが走る。
「なにがわかったの?
俺、まだなんもしてないけど」
「っ、わかったものはわかったんだからいいでしょ!早くどいて!」
「いやでーす。
というか、今からされること分かってるんだ?
胡桃の変態」
「っ、なっ、それは遥のほうでしょ!」
「ご名答」
心臓がドコドコ言って、ぶわりと顔が熱くなる私に、目を細めてクスクス笑うだけ。
なにがおかしいの!?
「ほら、もう一回。
俺は今、心の中でなんて言ってる?」
今度こそ唇まで数センチってところで囁かれて、もはや自分の心臓の音さえも聞こえなくなるくらい、体が震える。
今まで遥の心の声が聴覚のほとんどを支配していたから、遥の“ 声 ”をちゃんと聞くと、
自分が今どういう状況で、なにをされそうになっているのか、いやでも意識してしまう。
「へえ……俺の声、すき?」
「なっ!?」
「今までは俺のうるさい心の声が聞こえてたけど、それがなくなったんだもんな。だったら俺の声に集中してしまうのも無理はないよな」
「だから、いちいち口に出すのやめて……っ」
「んー、だってさ。
そしたら胡桃、もっともっと顔赤くするから。
かわいすぎて、もっともっといじめたくなる」
小学生かっ!
「小学生で結構。
男なんて好きな子、というか可愛い彼女前にしたらみんなアホになんの」