もう、キスだけじゃ足んない。


「ねねっ、このお洋服似合う?」

「うん、かわいいよ」


「えへへ、はるかくんもめちゃくちゃかっこいいよ!」

「ん、ありがとうな」


遥が女の子に笑いかけてるの、なんか新鮮……。

相手は一回りも離れた幼稚園の子なのに……。


「おい。俺との態度ちがいすぎるだろ」

「あたりまえだろ」


ムッとする伊予くんに、ヤレヤレとため息をつく遥。


「お姉ちゃんは?お姉ちゃんはおなまえ、なんていうの!?」

「私?」

「うんっ!」


ぼーっと遥を眺めてたら、ブラウスの裾をくいくいっと引っ張られた。


「ふふっ、胡桃って言います。
はじめまして。まどかちゃん、せとかちゃん」

「うんっ、はじめまして!
くるみちゃん、すっごくかわいいね!」

「ふたりのほうがかわいいよ」

「ほんと!?」

「うん」


えへへって笑うふたりがかわいくてしょうがない。

ふだん小さい子と関わることがないからアレだけど、もし自分に子供ができたら、こんな感じなのかなーって。


「くるみちゃん、くるみちゃん!」


「ん?なあに?」


「わたし、お花のかんむり作ったげる!」


「ほんとに?いいの?」


「うんっ、いいよ!」

「はるかくんにもつくったげるね!」


まどかちゃんが私の手を。

せとかちゃんが遥の手をとる。


「ちょっ、おまえら、俺が今、胡桃と……」

「残念だったな、伊予」


焦ったような伊予くんの声と、ふっと笑う遥の声がうしろで聞こえたけれど、


「はやくいこっ、くるみちゃん!」

「うんっ」


私はまどかちゃんに連れられて、公園へと向かった。
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