もう、キスだけじゃ足んない。


どうでもいいよ、そんなこと!

いいかげん離れて……!


幼なじみだから遥の顔は嫌というほど見てきたのに。

付き合ってからも、嫌というほど近い距離でいるのに。


遥の美形も、この距離も。

キス寸前の、この甘ったるいムードも、ぜんぶぜんぶ未だに慣れない。


「なら練習ってことで、ふたりのときは絶対押し倒すってことでいい?」


「っ、バカ言わないで!」


「あー、かわいい。
ほんと、好き」


「っ……」


冗談なのか本気なのか。

いや、遥ならたぶん本気。

でもそう言って笑ったあとで、また私を喜ばせることを言ってくれるから。


私だって……好きだよ、遥……。


「それ、口に出して言って欲しいな」

「遊ばないで」


ほんっと、いいかげん離れて。

心臓もたないから……。


「だめー。
俺は離れないよ」


「遥……っ」


「そんなかわいすぎる顔と声でもだめ。
つーか、煽ってるふうにしか見えない。
胡桃が怒ろうが拗ねようが、俺にはかわいいとか愛おしいとしか思えないから」


もう、黙って……。

遥、心の声が聞こえるようになってから、どんどんいじわるになってない……?


「そう?
けどまあ、胡桃が好きでたまんなくて、構い倒したくなるの。ごめんな?」


「っ、べつに……」


だから、好き好き攻撃もやめてって!


「けど今日はいろいろあって疲れただろうし。もう少ししたら放してあげる」


「もう少し……」


「そう、もう少し」


にっこり笑う姿は拒否権はないよって言ってるみたいで。

結局それに流されちゃう自分も、相当遥に甘い気がする。


「当ててみて」


「え?」


「俺が今、なに考えてるか」


「そ、それを答えてどうするの?」


「当たったら、5回だけキスする」
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