もう、キスだけじゃ足んない。
「……また、お母さんだ」
「せとかさん……」
ほんと、ふたりでいるときに電話かけてくること多いよね、お母さん……。
「も、もしもし?」
「やっほー胡桃!どう?久しぶりのおばあちゃん家は!遥くんと楽しんでる?」
「楽しんでるけど……どうしたの?」
「そう、よかった!
おばあちゃんもうまくやってくれたみたいね」
「え?」
『どうした?』
口パクで言う遥に、私も首をかしげる。
「うまくって……なんのこと?」
「あら、遥くんから聞いてないの?
おばあちゃんのぶどう園に、胡桃を連れて行ってあげたいって言ったのは、おばあちゃんじゃなくて、遥くんって話」
「え……?」
どういうこと?
ぶどう園に誘ったのは、おばあちゃんじゃなくて、遥……?
同じく私の電話に耳を寄せていた遥をバッと見れば。
「えと、はる、か……?」
「まじか……せとかさん……」
ほんのり耳を赤くして、どこか気まずそうに髪をグシャグシャする遥がいた。