もう、キスだけじゃ足んない。


「そ、そんなの……っ」

『遥だって……』


ん?


『遥だって、まどかちゃんたちにかわいいって言ってた……っ』

『キスだってされて……』


え?


「胡桃?」


どこか拗ねたような、心の声。

まさか、胡桃……。


「嫉妬、してくれたの?伊予の妹たちに」

「っ……」


顔が見たくて、掬いあげるようにあごを持ち上げれば、ぎゅっと唇を噛みしめたままの表情は、ますます赤く染まってて。


ドクン……。

ずくりと体の奥底が揺れた気がして、慌てて思考をクリアにする。


そう、たしかあのとき。

俺がふたりの頭なでてるとき、胡桃心の中で言ってたっけ。


『遥が女の子に笑いかけてるの、なんか新鮮……。
相手は一回りも離れた幼稚園の子なのに……』


「っ……胡桃……っ!」


「きゃあ!?なに!?」

『どうしたの!?』


「……俺ばっかだと思ってた」

「え?」


「俺ばっか、胡桃を好きなんだと思ってた」

『え?え?』


抱きついた拍子に思わず押し倒してしまったけど、離れたくなくて上に乗っかったまま抱きしめる。


「はるか……?」

「胡桃……どれだけ俺のこと好きなの」
< 59 / 323 >

この作品をシェア

pagetop