もう、キスだけじゃ足んない。


俺の方が好きだって思ってた。俺のほうが何倍も、何十倍もずっと。

もちろん俺を好きでいてくれてることも、めちゃめちゃ愛されてんなーとも思う。


でもやっぱり俺の方が胡桃を好きだから、俺みたいに。

もう抜け出せないくらい、もっともっと俺を好きになってくれたらって思ってた。


『遥……?』


もう一度腕の中に引き入れて、強く強く抱きしめる。


なんでわかってなかったんだろ、俺。

胡桃はこんなに俺を好きでいてくれたのに。


デートらしいデートになったのは最初だけだったのに、こんな目真っ赤にするまで泣いて喜んでくれて。


一回り下の子にも、嫉妬して。


『私だって遥のこと、大好きなのに』


うん。


「私は遥のこと、ずっと、だれよりも……って、なんで笑ってるの!?」

『人がこんな真剣に、はずかしいの我慢して話してるのに!』


だって、こんなの笑うしかない。


「ほんともう、幸せ……」

「はぁ?」


もう、さっきからずっと頬緩みっぱなし。


俺のほうが、私の方が。

私よりも、俺よりも。


バカップルかよ、俺たち……。

さすがにこんな会話するわけないって、自分でも思ってたんだけどなー、なんて。


『なに?どうしたの……?』


そこで引くなよ。

さっきまであんなえっろい顔してたやつがどうした。


なんか、めちゃくちゃいじめたい気分になってきたんだけど……。


そう思って、思わずぐりっと首に唇を当てたけれど。


「っ、ん……」


それだけで甘い声を出すから、もうだめ。

いじめたいよりも。


「ふっ……ぁ、」


「さっきも言ったじゃん。胡桃が俺の愛情でとけそうになるくらいまで愛してあげるから、覚悟しててって」


たくさんたくさん、甘やかしたい。
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