もう、キスだけじゃ足んない。


「っ……ううっ、」

「どうした?」


「急いで食べたから、頭キーンてする……」

「なに。そんなに早くキスしてほしかったの?」


「っ、あっ、いや、ちがっ……」

『それは、そうだけど……』


っ……おい。

かわいすぎだろ……。


これがツンデレの破壊力。

口で言ってることと、内心思ってることが逆。


頭の中にはずかしがったような、心の声が流れてくる。


「ううっ、寒い……鳥肌立ってる」

『遥……あっためてくれないかな』


ほんとさ、俺に心の声が聞こえてるって忘れてんじゃないの、胡桃。


いつものツンはどこいったよ。


ああ、そっか。

一応口で言う分にはツンなままだけど、心の声がってことか。


いや、待てよ。

心の声がってことは、つまりは無意識に俺のこと求めてくれてるってこと?


……まじで。


ふつうにデレんのより、破壊力凄まじいんだけど。


もっと早く、胡桃の心の声聞きたかった。


だって、いくら口でははずかしがってるって言っても、心の中ではずっとそんな最高なこと思ってたとか、かわいすぎて失神する。


優しくしたい。甘やかしたい。


もっとそのはずかしがった顔がみたい。


好きとか愛してるとか、そんなのもうぜんぶぐちゃぐちゃになって。

胡桃に引きずられる。

どこまでもどこまでも、底沼のように胡桃に堕ちていく。ハマっていく。
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