もう、キスだけじゃ足んない。


「寒い?」

「っ、寒い……」

『ぎゅっとしてほしい……』


「ぎゅーする?」

「……する」


正面からぎゅうっと抱きしめて、サラサラの髪に指を通しながら、ゆっくり頭をなでる。


はぁ……ほんといいにおい。


心が落ちつくような、優しくて甘い。

昨日も思ったけど、ほんとになんもつけてない?


「ねえ、遥……っ、ひゃあっ!?」

『なっ、なに……!?』


「ん……ほんと、まじでいいにおいする。
耳も、首も、どこもかしこも甘い……」


「っ、や、だから、なにもつけてないってば……っ、」


なぞるように唇を推し当てれば、びくりと体が震えて腰を引こうとするから。


「離れたらだめだよ」


「っ、や……でも、はずかしい、」


「大丈夫。はずかしくない。
めちゃくちゃかわいいだけだから」


俺に腕まわして。

もっと見せて。


「っ、うっ、やっ……」


俺の膝の上に乗せて、グッと腰を引き寄せて、また首への愛撫を再開する。


「っ、ん……っ、はる、か、」


っ、たまんねー……。


胡桃が言う、胡桃にこんなはずかしいことしてるのは俺だっていうのに。


なおも俺の名前をよんで、俺にぎゅっとしがみついてくる姿が愛おしくて、顔が見えないことをいいことに、ずっと口角が上がりっぱなし。


前に聞いたことがある。


香水とかなんもつけてなくて、いいにおいだって思う相手は、遺伝子レベルで相性がいいって。


ってことは、なにもしなくても、お互いがお互いを本能的に求め合ってるって意味で。


『っ、なんか、体、ぞくぞくする……っ』


少しふれただけなのに、こんなに声甘くして、体震わせて。


「やっばい……」


興奮、しないわけがない。
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