もう、キスだけじゃ足んない。


「まだ寒い?」

「ちょっと、だけ……」


「ん、了解。
けど、すぐに暑くなるから大丈夫だよ」


「え?」


「暑くなること、今からいっぱいするから」

『暑くなること……』


羞恥に濡れていた瞳に、期待の色が加わっていく。


はずかしい。

でもふれてほしい。

ふたつの感情で揺れる瞳と心の声。


もっと聞きたい。溶かしたい。

かわいい姿、もっと見たい。


今すぐにでも押し倒して、めちゃくちゃにキスしたい衝動を必死に抑えて問いかける。


「胡桃」


「な、に……?」


「プレゼントに、香水贈る意味って、知ってる?」


『贈る意味……?』


「そう。
男と女で贈る意味がちがうんだけど、わかる?」


「ううん……」


中学のときに胡桃が俺にくれたとき。

きっとそんな意味はなかったと思う。

ただ純粋に俺にプレゼントしたくて、手作りしてくれただけ。

でも、今ならわかる。


「女の人から男に香水を贈る意味は、相手が大切、絆が深い、の他に、もう一つある」


「それって……」


「愛情表現。好きな男に自分の好きな香りをつけていてほしい」


「っ!!」
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