もう、キスだけじゃ足んない。


そもそも香水をプレゼントするのは、深い関係性であることがふつうらしく、


香水をプレゼントするほど、相手を大切に思っているって意味で。


胡桃のことだから、中学のときはまだ俺への気持ちは無自覚だっただろうし、香水の意味も知らなかったと思う。

でも、そんな中でも、無意識に香水を選んで、俺にプレゼントしてくれた。


それだけで、もう言いようもないくらい、

言葉にできないくらい、胡桃への好きがあふれて。


胡桃、前に言ってた。

俺のこと、ずっと好きだったって。


距離を縮めたい、心から大切。


いくら無意識、無自覚だろうと、
それが、そのころからで。


そのときから胡桃は俺を好きでいてくれたんだって思ったら、もう無理だった。


「独占欲」

「え……?」


「男が女の人に贈る意味は、マーキング、独占したい」


だれにも見せたくない。だれにも笑いかけてほしくない。

はずかしがってる表情も、心の底からの笑顔も。

俺にふれられて、理性がゆるゆるになった色っぽい表情も、甘い声も。


この子は俺のものだ。

胡桃のぜんぶが俺のもの。


好きだよ、好き、好きなんだ。


とまらない。

胡桃への思いが、独占欲が、底を知らない。


「俺は胡桃のだよ」


「いくらファンがいようと、どんなにたくさんの女に囲まれようと、どうでもいい。興味ない。俺にとっての女の子はずっと胡桃だけ」


胡桃を好きになる前も、なったあとも。

今も、これからも、ずっとずっと。


「っ、はる、か……っ」


アップにしていた髪を解いてあげて、ゆっくり体を押し倒す。


「っ、ん……」


そして、さっきの香水をそっとその細い手首にふきつけて、そこに優しく口づければ。


『はる、か……っ、』


期待に染まった目の色がますます濃くなった。


「私は、遥の、だよ……」

『ずっと、遥だけ……っ』


うん、俺も。


「俺も、俺のぜんぶもずっと……」


余すことなく、胡桃のものだよ。
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