もう、キスだけじゃ足んない。
【遥side】
「ねえ、」
「なに?」
「はずかしいよ……」
「ん、でもごめん、慣れて。
俺は離したくない」
「もうっ、はるか……」
俺たちは今学校へと向かう途中。
じゃあなんでこんな甘い空気なのかって?
だって。
『手、恋人つなぎ……』
家出た瞬間手をつないだ俺。
もちろん、恋人つなぎで。
付き合って、胡桃とちゃんと登校したの、数えるくらいしかないんだよ。
もう付き合って1ヶ月は経つのに。
朝起きる時間もバラバラで、俺は仕事で学校に行けない日も多い。
そうなると、いっしょに登校することもなかなかないわけで。
「胡桃は俺のだって、王煌の男に知らしめてんの」
「そ、そんなことしなくても……」
『遥、いろんな意味で有名人なのに……』
知ってる。
前に教室でこの子は俺の彼女だって言って、キスしたこと、すぐに広まったみたいだし。
俺としては願ったり叶ったりで、言うことナシなんだけど。
だって、胡桃はかわいいから。
俺に媚び売ってくるようなモデルとか女優よりも、何倍も綺麗で、かわいい。
芸能人だから、とか、bondの1人だからとか関係ない。
男なんて、基本負けず嫌いだし、ほしいと思ったら絶対手に入れたい主義のやつが多い。
まあ、例にもよらず、俺もそうだけど。
誰かにとられるとか、ミジンコ程度にも思ってないけど。
牽制しとくに越したことはない。
現に甘利は、俺たちが幼なじみ同士で、しかも付き合ってるって分かってて、胡桃にぶつかってたし……。