もう、キスだけじゃ足んない。
「おーおー、熱いねおふたりさん」
「甘利くん……!」
「おはよ、橘」
「今ちょうどおまえのこと考えてたところだよ」
「は?出演料払ってもらっていい?」
げー……と嫌な顔をする甘利。
「なに考えてんのか知んないけど、俺の頭の中は10割胡桃だから」
「そんなん、言われなくてもわかってるわ」
苦笑いの甘利に、俺はグッと顔を引きしめる。
「めっちゃ浮かれてんじゃん」
あ、やっぱわかんのな。
無表情でいるつもりでも、やっぱ胡桃の前だと無理だ。
だって浮かれるだろ。
そりゃあ、もうめちゃくちゃ。
「大好きな彼女といっしょに登校だもんな?」
「もう、はるか……!」
顔を真っ赤にして俺を見上げる胡桃。
なあ、目の前に甘利いるからさ。
頼むから、そんなかわいい顔すんなって。
仕事あるのは嫌だけど。
それはもうめちゃくちゃ嫌だけど、この時間があるからがんばれる。
「遥にとって、橘は必要不可欠な存在なんだな」
「うん」
過去も今も、これからも。
胡桃はずっと、俺の生きがいなんだよ。