もう、キスだけじゃ足んない。
それから教室に入ると。
「みんなおはよう、今日もかわいいね」
「きゃあああ!
不知火くんんん!」
「ねーね!君!普通科の子?
めちゃくちゃタイプなんだけど!」
「ありがとう〜!!
八朔くんも、めちゃくちゃかっこいいよ!」
うるせえ……。
相変わらず、教室中が祭りのように騒がしくて、顔をしかめる。
「甘利もあそこに混ざってくれば?」
「だれが混ざるか」
祭りの中心は、甘利と同じくcrownのメンバー、不知火と八朔。
つか、八朔隣のクラスじゃなかったっけ?
なんでここにいんの。
けど興味のかけらもない俺は、胡桃と並んで席に座る。
俺の関心は、隣の席の彼女しかない。
「胡……」
「あっーー!
胡桃ちゃん、おはよ!」
「は、八朔くん……」
『っ、ち、近い……』
「おい、離れろ」
先生が来るまで胡桃と話そうと思っていたら、満面の笑みで突っ込んできた八朔。
さっきまで別の女子のところにいたくせに。
つかいつの間に胡桃ちゃん呼びになってんだよ。
前は妹ちゃんだったくせに。
「胡桃大丈夫か?」
「う、うん、ありがとう遥……」
「あいつのこと視界に入れたらだめだよ。
目腐るから」
胡桃の前に立って、八朔を見下ろす。