もう、キスだけじゃ足んない。
「ちょっ、遥くん!
胡桃ちゃんに近づけないんだけど!?」
「そもそも近づくな、この女好き野郎」
「はあー?かわいい子にあいさつして何が悪いんですかー?」
うざ……どことなく伊予と同じにおいがする。
「おはよう、橘さん」
「お、おはよう、不知火くん」
「なんっで律はよくて、俺はだめなのー!?」
「それはふだんのおまえの言動のせいだろ……」
甘利がヤレヤレとため息をつく。
彼氏がいる女の子にかわいいね、とか言って近づこうとする男をだれが信用するか。
チャラすぎなんだよ、このゲス野郎。
不知火は元々そういうキャラだし。
女遊びしてるとか浮いた噂なんて、一つもないから。
芸能科でそういうウワサ聞かないやつなんて、ほんの一握りくらい。
結局だ。
いくら俺が隣にいようと、俺と付き合ってるって知られようと、胡桃を狙う男は消えない。
ほんと……胡桃を他の男の視界に入らないようにするにはどうしたらいいか、最近まじで考えてる。
「どきなさいよ、八朔くん!
おはよう、胡桃!なんもされてない?」
「おはよう、あーちゃん。
私は大丈夫だよ」