もう、キスだけじゃ足んない。
「ならいいけど……」
次胡桃に抱きつこうもんなら、わかってるわよね?
そう、にっこり八朔に笑いかける天草。
「ひっ!」
その顔は……まあ、うん。
男の俺からしてもおっかない。
「天草」
「ん?」
「文化祭の日、胡桃のこと守ってくれてありがとな」
「いいよ、ぜんぜん!
あたしも男装できて楽しかったし!」
「聞いた。男装好きなんだって?」
「うん、そうなんだよねー……ねえ、」
「ん?」
「胡桃のドレス姿かわいかった?
やっぱいろいろやっちゃったの?ぐふっ、」
「……なに聞いてんの、天草」
グッと顔を近づけられたと思ったら、いたずらっ子みたいな顔して、小さい声で聞かれた。
「いやー、胡桃に聞いてもはずかしがって教えてくんないしさ!ふたりの恋模様、めちゃくちゃ聞きたいんだよね」
「なんでそんな聞きたいの?」
「え、コミケで出す本のネタにするからだけど?」
「……」
まじか……。
クイッ。
ん?
唖然としていたら、立っていた俺の制服がうしろに引っ張られた。
『……』
え、なにそのかわいい顔。
視線は横を向いたまま。
俺のほうは見てないんだけど、ツンって口が尖ってて、ほんのり顔が赤い。
「あすみー!ちょっといいー?」
「なにー?
ごめん、ふたりとも、ちょっと行ってくるね」
「し、不知火くん!
いっしょに写真いいかな……!」
「もちろんだよ」
「ねえ、みはや。
かわいい子いっしょに声かけに行かない?」
「知らん」
天草が席を離れたと同時に、胡桃の周りに集まっていた甘利たちもみんな離れていく。
「……」
「どうした?」
秘密な話でもするように、そっと胡桃に話しかける。
『友達、なのに……こんなこと思うなんて……』
「こんなことって?」