もう、キスだけじゃ足んない。


「っ、なっ、え?
な、なんで……」


「なんでって……ぜんぶ聞こえてるし」


「や、やだ……聞かないで」


目を白黒させて慌てる胡桃。


シャツ、掴んだことのは無意識?

心の声が聞こえることも忘れるくらい、なにか別のこと考えてた?


「教えてよ。俺がそばにいるのに、俺よりも大事な考えごとって、なに?」

「それ、は……」


もごっと口ごもる胡桃。


「心の声でいいから、教えて」

「っ……」


周りに聞こえないように、そっと囁けば、びくりと肩を揺らす。

元々胡桃の性格的に、自分のことを言うハキハキタイプじゃない。

だから少しでも思うことがあるなら、なんでも言ってほしい、俺だけには。


『モヤモヤしたの……』


モヤモヤ?


『その……あーちゃんと、なんか、楽しそうに話してるの、見て』

「え……」


『あーちゃんにそんな気はないってわかってるけど、遥、あんまり他の女の子と話さないから……』


「ごめんね、めんどくさくて……」
『こんなの……あーちゃんにも、申し訳ないし……』


「え、どこが」

「え?」

「最高じゃん。てか、それむしろ俺のほうだし」
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