もう、キスだけじゃ足んない。
「っ、だって……!」
「はい、時間切れ。
体持ち上げるよ」
「ちょっ、遥……!」
「はいはい。
言いたいことあるなら、このまま聞くから」
抱き上げられて、乗せられて。
「押し倒してるのもいいけど、俺的にこの体勢が一番好き」
「ううっ……」
後頭部と、腰に回った腕にグッと引き寄せられて、必然的に私も遥の首に抱きつくことになる。
「身長差あるからさ、目線とかこうしない限り合わないし、なにより一番密着できる」
「ひゃあ……っ、ぅ」
ぎゅうっと抱きしめられたまま、下ろした髪をかき分けられて、首を唇でなぞられる。
「俺のあげた香水、つけてくれてる?」
「ん……つけて、る」
「よしよし、いい子だね」
なるべく毎日つけてって言われたからつけるようにしてる。
学校だし、明らか香水ってつけてるってバレないように、かすかに香る程度。
「はぁ……胡桃抱きしめてると、ほんと落ちつく。俺の精神安定剤」
せ、精神安定剤?
「うん。
なんかさ、思ったんだけど」
「うん」
「朝いっしょに来て、同じ教室で授業受けて、いっしょに昼食べて、またいっしょに帰れたらそれ以上に幸せなことなんて、ない気がするなって」
「遥……」
ただでさえ、なかなか学校に来れない遥。
そうなると、一緒に行くことも、帰ることはもちろん……。
「それにもうちょっとで、芸能科に戻らないとだし」
「うん……」