もう、キスだけじゃ足んない。


普通科と合併になって、あと数日で1ヶ月。

いっしょに授業受けられるのも、もう少ししかないんだ……。


「胡桃」

「ん?」


ゆっくり体が離れて、またおでこがぶつかる。


「さっき言ったこと、覚えてる?」

「さっき、言ったこと……」


ドキッと心臓が跳ねた。

遥のまとう空気が、瞳が、急にどろりと甘くなった気がする。


「昼休み、覚悟しろよって言ったやつ」


「うん……」


「覚悟、できた?」


「か、覚悟……っ」


「うん」


それ、私に聞いちゃうの……!?


「そうだな。
俺になにされるか、もうわかってるだろ?」

「っ、えっと、」


「だから心の声聞こえないように、離れて座ろうとしてたんだろ?」


っ……バレてた。


「分かるよ。
胡桃のことだから。なんでも」

「ううっ……」


クスッと笑った声のあとで。

おでこに、まぶたに、耳に。

甘くて優しい唇が落ちてくる。


「腕、そのままな?」

「ううっ……」


「ぎゅうってしたまま、キスしたい」

「はる、か……っ」

「せっかく学校に来てるんだし、青春っぽいこと、したいじゃん。図書室でキスとか王道だろ?」


「っ、ん……もうっ」


図書室がいいって、そういうこと。


「うん。今から、いっぱい気持ちよくしてあげる」
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