もう、キスだけじゃ足んない。


遥はずっと、もう小さいときからずっと、胡桃が好きだった。


でももしかしたら、本当は杏も胡桃のことを好きだけど、遥がいるから、なにも言わないで我慢してるんじゃないかって。


「うん……」


つらいと思う。

つらいこと、聞かせてると思う。


胡桃が離れたから、遥だけじゃなく、杏も荒れた。

こんなこと、今話したって胡桃を傷つけるってわかってるのに、どうしてもとまらなかった。


妹の胡桃にでさえ、話したことなかったから。

杏を好きになった、本当の理由。


ちゃんと言葉にして、自分に言い聞かせたかった。


ずっと隠し続けてきた自分の気持ちと、向き合うために。


「でね、あたし聞いたの。
杏って、胡桃のこと好きだったの?って」


「うん」


そのときに杏、言ったんだ。


『大事だし、大切に思ってるけど、好きではないよ。俺にとって胡桃は大事な幼なじみで、弟の好きな人』


『じゃあなんで、そんな荒れてるの……』


『桃華が、苦しそうだから』


『え……?』


『胡桃の姿見て、いつもつらそうにしてる桃華見てたら、いつの間にか、こうなってた』


今にも泣きそうな顔して、笑って、言ったの。


「それで……?」


胡桃の目からぽろぽろ涙がこぼれる。

でも涙なんて気にしないって強い目で見てくるから、あたしもうなずいて言葉を続ける。


「そのときに気づいたんだ」


ああ、あたし、ずっと杏のこと、好きだったんだって。
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