英雄騎士様は呪われています。そして、記憶喪失中らしいです。溺愛の理由?記憶がないから誰にもわかりません。
説得力はありません
結局今日は、私の屋敷に帰れなかった。
治療院の仕事が、今日は休みで良かった。
毎日毎日働いていたから、院長から「たまには休みなさい。うちがブラック職場と勘違いされてしまう」と言われて、三日間の休みをいただいていたおかげで、サボることはなかった。
でも、明日には自宅に着替えを取りに行って明後日からは、仕事にも行かないといけない。
ノクサス様のお邸は王都の一等地だから、私の屋敷がある村よりも、通うのが楽になる。
いつもは、朝早くから馬で通っていたから。
部屋を見渡すと、本当に豪華だ。
装飾のある花瓶に、絵画は有名な画家なのか暖炉と同じくらい大きなものだ。
バルコニーにも花の鉢植えがあり、月夜を背景に見事なものだった。
こんな部屋を用意されるとは、ただのお世話係と思ってないのはわかる。
でも……私は、ノクサス様を全く知らない。
一体どこでお会いしたのかしら……英雄騎士様なら、会えば忘れないと思うのだけど……。
部屋に置いてあるブランケットを肩にかけて、バルコニーに出るとやはり少しだけ風があった。
そして、隣のバルコニーでは、ノクサス様がウロウロ回るように歩いていた。
……一体何をしているのだろうか。
全くわからない。
不思議すぎて声もかけられず、呆然と見ていると、ノクサス様が私に気づいた。
そのまま、嬉しそうに近づいて来た。
バルコニーは繋がってないから、バルコニーとバルコニーの間に1メートルほどの距離がある。
「ダリア」
「はい……どうされましたか? お邪魔なら下がりますが……」
「邪魔ではない。君が出て来ないかと思っていただけだ」
なにかの願掛けのつもりだったのだろうか……。
英雄騎士様の噂ってどんなものだったかしらね……確か、凛々しいお姿で、若いのに威厳もあって……こんなに落ち着かない人だったとは。
「あの……ノクサス様」
「なんだ? なにか困ったことでもあるのか? 何でも言ってくれ。君が過ごしやすいように、邸を整えるぞ。この邸は俺のもので間違いないらしいからな」
「そ、それは、将来の奥方様と話し合ってください。私がお聞きたいのは、ノクサス様がどうして私を知っておられるのか……と」
私のために、この陛下からいただいた大豪邸を改装するつもりですか。
私は、奥方様ではないのに……。私は、将来はマレット伯爵の妾にあがるのですよ。
「どうしてと言われても……記憶がないから、わからないのだ。でも、ダリアを見て間違いないと確信している」
「ということは、お会いしたのは、この外見ですよね? 子どもの時とかではないということですよね……」
ますます謎が深まる。
最近お会いした記憶がない。
「王都に帰還されたのは一ヶ月前ですよね」
「そうらしいが……やはり、俺を知っているのか?」
「英雄騎士様ノクサス様が王都に帰還されたことは村でも有名です。私は、その日は仕事がお休みだったので、騎士団の帰還を見ることはなかったのですけれど……」
騎士団の凱旋に、街はパレードのように湧いていたらしい。
その日は、仕事もまともにないだろうと、院長から休みをいただいていて、私は村にいた。
だから、本当にノクサス様と接点はない。
思いだそうと悩む私に、ノクサス様は優しく声をかける。
「ダリア……来てくれてありがとう。君に会えて良かった」
「……思いだすといいですね」
「必ず思いだそう。本当の意味で今は君しか信じられない」
「フェルさんとアーベルさんは?」
「おそらく信頼していた部下だったのだろうが、記憶がない。ダリアのことしか記憶にないのだ。名前と顔だけだが……」
それは不安だろう。
信頼していた部下だとしても、ノクサス様からすれば確信がないのだ。
だから、覚えている私にこだわるのだろうと思う。
「ノクサス様。私もお力になりますね」
「助かる」
そして、ノクサス様はまた微笑を浮かべた。
仮面はなく、顔の片側は禍々しいけれど、きっとお力になりたいとは思っていた。
治療院の仕事が、今日は休みで良かった。
毎日毎日働いていたから、院長から「たまには休みなさい。うちがブラック職場と勘違いされてしまう」と言われて、三日間の休みをいただいていたおかげで、サボることはなかった。
でも、明日には自宅に着替えを取りに行って明後日からは、仕事にも行かないといけない。
ノクサス様のお邸は王都の一等地だから、私の屋敷がある村よりも、通うのが楽になる。
いつもは、朝早くから馬で通っていたから。
部屋を見渡すと、本当に豪華だ。
装飾のある花瓶に、絵画は有名な画家なのか暖炉と同じくらい大きなものだ。
バルコニーにも花の鉢植えがあり、月夜を背景に見事なものだった。
こんな部屋を用意されるとは、ただのお世話係と思ってないのはわかる。
でも……私は、ノクサス様を全く知らない。
一体どこでお会いしたのかしら……英雄騎士様なら、会えば忘れないと思うのだけど……。
部屋に置いてあるブランケットを肩にかけて、バルコニーに出るとやはり少しだけ風があった。
そして、隣のバルコニーでは、ノクサス様がウロウロ回るように歩いていた。
……一体何をしているのだろうか。
全くわからない。
不思議すぎて声もかけられず、呆然と見ていると、ノクサス様が私に気づいた。
そのまま、嬉しそうに近づいて来た。
バルコニーは繋がってないから、バルコニーとバルコニーの間に1メートルほどの距離がある。
「ダリア」
「はい……どうされましたか? お邪魔なら下がりますが……」
「邪魔ではない。君が出て来ないかと思っていただけだ」
なにかの願掛けのつもりだったのだろうか……。
英雄騎士様の噂ってどんなものだったかしらね……確か、凛々しいお姿で、若いのに威厳もあって……こんなに落ち着かない人だったとは。
「あの……ノクサス様」
「なんだ? なにか困ったことでもあるのか? 何でも言ってくれ。君が過ごしやすいように、邸を整えるぞ。この邸は俺のもので間違いないらしいからな」
「そ、それは、将来の奥方様と話し合ってください。私がお聞きたいのは、ノクサス様がどうして私を知っておられるのか……と」
私のために、この陛下からいただいた大豪邸を改装するつもりですか。
私は、奥方様ではないのに……。私は、将来はマレット伯爵の妾にあがるのですよ。
「どうしてと言われても……記憶がないから、わからないのだ。でも、ダリアを見て間違いないと確信している」
「ということは、お会いしたのは、この外見ですよね? 子どもの時とかではないということですよね……」
ますます謎が深まる。
最近お会いした記憶がない。
「王都に帰還されたのは一ヶ月前ですよね」
「そうらしいが……やはり、俺を知っているのか?」
「英雄騎士様ノクサス様が王都に帰還されたことは村でも有名です。私は、その日は仕事がお休みだったので、騎士団の帰還を見ることはなかったのですけれど……」
騎士団の凱旋に、街はパレードのように湧いていたらしい。
その日は、仕事もまともにないだろうと、院長から休みをいただいていて、私は村にいた。
だから、本当にノクサス様と接点はない。
思いだそうと悩む私に、ノクサス様は優しく声をかける。
「ダリア……来てくれてありがとう。君に会えて良かった」
「……思いだすといいですね」
「必ず思いだそう。本当の意味で今は君しか信じられない」
「フェルさんとアーベルさんは?」
「おそらく信頼していた部下だったのだろうが、記憶がない。ダリアのことしか記憶にないのだ。名前と顔だけだが……」
それは不安だろう。
信頼していた部下だとしても、ノクサス様からすれば確信がないのだ。
だから、覚えている私にこだわるのだろうと思う。
「ノクサス様。私もお力になりますね」
「助かる」
そして、ノクサス様はまた微笑を浮かべた。
仮面はなく、顔の片側は禍々しいけれど、きっとお力になりたいとは思っていた。