英雄騎士様は呪われています。そして、記憶喪失中らしいです。溺愛の理由?記憶がないから誰にもわかりません。
口説き落としてください
メイドが先頭に歩き、邸のお手洗いまで案内してくれていた。
「……ロバートさん、チャンスですよ。メイドを引き留めていてください」
「何のチャンスですか……。大人しくしていてくださいよ。ノクサス様が心配しますよ。大体、どうやって引き留めるんですか?」
「そうですね……ロバートさんが、口説き落とすとか? 騎士様は、女性に人気の職業ですから、きっといけますよ。ロバートさんもなかなか整ったお顔ですし……」
「やめてくださいよ。落とせなかったらどうするんですか……しかも、仕事中にそんなことは出来ません」
「本気で落とさなくてもいいんですよ。引き留める間だけで……」
「……ダリア様から、離れたら問題です!」
ひそひそ話でロバートさんとそう話していると、メイドが「こちらです」と教えてくれた。
あっという間にお手洗いについてしまった。
どうしようか? と目の前を見ると、メイドがロバートさんをチラリと見た。
やっぱり騎士様は女性に人気だと確信した。
ランドン公爵邸に騎士様が、来ることはあっても、主人の客人とメイドたちがお知り合いになることは無いだろうし、公開訓練場では、令嬢たちだけでなく、平民の女性たちも見学に来ていたから、このメイドもきっと騎士であるロバートさんが気になってくれると思った。
「あの……すみません。いくら護衛とはいえ、お手洗いの前に騎士様にいてもらうのは……良ければ、どこかで、こちらのロバートさんと、待っていてもらえませんか? ロバートさんが迷っては困りますし」
メイドにそう言うと、若いせいか、チャンスとでも思ったのだろう。
あっさりと、了承し「近くの部屋でお待ちします」と言った。
「ダリア様。困りますよ!」
「大丈夫ですよ。すぐに戻りますから……一階のこの辺りだけ見るだけですから。頑張ってメイドと楽しんできてください。でも、節度は守ってくださいね」
「何の節度ですか……」
また、ロバートさんとひそひそと話すが、これ以上メイドを待たせられない。
強引かもしれないが、ロバートさんにメイドを任せて近くの部屋に行くのを確認して、私は、お手洗いに入らず、この辺りを歩いた。
もし、私の予想が当たっていれば、この邸に呪いの核があるはずだ。
ランドン公爵令嬢様が、部屋に隠しているなら、この辺りを探しても無駄だろう。
でも、魔法使いじゃないランドン公爵令嬢様に呪いを扱えるとは思えない。
そうなると、絶対にあの呪いの核に関わっている魔法使いがこの邸にいるはずだ。
……この邸に魔力を放ったら、どこかの部屋が反応するはず。
相手にバレるかもしれないけれど、私がしたとバレなければいいんだし……早く、見つけないと、ノクサス様の呪いはいつまでも解けない。
その時、後ろから声をかけられた。
「なにをしているんですか!?」
振り向くと、下僕の格好をした男性がいた。
見つかってしまった。
「すみません……迷ってしまって」
見つかってしまったと思い、迷子だという体で取り繕うとして、しおらかに謝罪した。
一応、公爵の招待状でやってきたお客様だから、これで下僕は突っ込んでこないだろう。
でも、様子が違った。
困ったように、横を向いた下僕の格好の男性は、はぁーーとため息を吐いた。
「ダリア様。ノクサス様が心配しますよ。ロバートとすぐにお茶会にお戻りください」
「……下僕の方ですよね?」
「ここではそうですが……ノクサス様の部下ですよ。秘密裏に動いているので、ダリア様は大人しくお戻りを……」
ノクサス様はすでに部下を侵入させていた。おそらくノクサス様の間者だろう。
やはり、騎士団のトップだから抜け目はなかった。
「でしたら、この邸に魔法使いはいませんか? 魔法使いがいればそこに呪いの核があると思うのですけれど……」
「……ランドン公爵令嬢が呪われていると思ってないのですか?」
「すごく元気ですし……以前から、ノクサス様の呪いを治すと言っていましたから……もしかしたら治せる確信があったのではと思うんです」
「ノエルでも治せなかった呪いを、治せる白魔法使いがいると?」
「ランドン公爵令嬢様の用意しようとしていた白魔法使いの能力はわかりませんが……確実に治せるのは、呪いの核をどうにかすることです。……ということは、ここに呪いをかけた魔物の核があると私は思っています。魔物の核があるなら、それを扱っている魔法使いがいても不思議じゃありません。だから、ランドン公爵令嬢様が用意しようとした魔法使いが持っている可能性があると私は思っています」
「魔法使いの部屋を探します。ついでに言うと、ランドン公爵令嬢様のお部屋には、そんな魔物の核はありませんでした」
やっぱり、ランドン公爵令嬢様は魔法使いじゃないから、ずっと呪われた核なんか持ってられないのだ。しかも、すでに探していたとは。仕事が速い。
「でも、ミストが穢れを見たと言ったから、必ずどこかで接触しているはずです」
「すぐに探しますから、ダリア様はお茶会にお戻りを……」
「わかりました」
そう言って、この間者に連れられてロバートさんとメイドのいる部屋に戻った。
ロバートさんは、この下僕の格好をした間者と顔見知りなのか、ギョッとしていた。
ロバートさんを睨んだ後、メイドに声をかけている。
「ここにいたことは秘密にしますから、お客様をお茶会にお連れになったほうがいいですよ」
「は、はい! すみません!」
私と慌てるメイドに、早くお茶会に戻れと言っているのだろう。
しかも、ノクサス様の間者だとバレないように、下僕の立場から言っているのだ。
メイドは仕事をサボって、騎士様と逢引きしているところを注意された気分だろう。
それでも騎士様と二人っきりが、貴重な経験だったのか、ロバートさんに熱い視線を送っている。
「……お話をしてくださりありがとうございます」
ロバートさんも、メイドに不快な想いをさせないためにか、そう言った。
しかも、笑みを浮かべていた。
騎士としての社交辞令の笑顔だろうか。それなりのマナーはあるのに、何故私の時にはそれを発揮させなかったのか。おかげで私は、あっという間に寿退社をしたのですよ。
「ダリア!!」
邸から、お茶会をしている外に出るといきなり名前を叫ばれた。
ノクサス様が駆け寄ってきている。
「ダリア! 心配した! お茶会に行ったと知らせをうけて……!」
「ノ、ノクサス様……! 苦しいです……」
力いっぱい抱きしめられて、顔がノクサス様の胸板で押しつぶされる。
「……来るのが遅くなって悪かった」
「来てくれるってわかっていますから、いいのですよ」
少しだけ力を緩めてくれたノクサス様と目が合うと、私のためにこんなに必死で来てくれた表情に照れてしまう。
そして、「何事もなくて良かった……」と言いながら、頬にキスをされる。
「何事とはなんですか? 何事とは……」
ノクサス様の後ろから、ランドン公爵令嬢様が必死で笑顔を作ろうとしながら歩いてきた。
「ノクサス。お茶会に来ただけで何をそんなに心配するんだ?」
アシュトン殿下は、本当になにがなんだかわからない感じだ。
ノクサス様の腕の中で彼を見上げると、不機嫌そのものだった。
「何故、アシュトン殿下までいるんですか?」
「アリスが、最近ご機嫌斜めだと公爵がぼやいていたから、心配で様子を見に来ただけだ。その時ちょうどノクサスの婚約者とお茶会をするというから、お邪魔させてもらったのだ」
「勝手に会わないでください。ダリアを見初められたら困ります」
ノクサス様、そんな方はいませんよ。
どう見たって、ランドン公爵令嬢様の方が美人ですよ。
「ノクサス様。アシュトン殿下は、ノクサス様の婚約者のお顔を知りたかっただけですよ」
「しかし、ダリアは可愛いからな。いつ、誰に見初められるか不安だ」
「そんな人はいません」
ノクサス様はわかっているのだろうか。私が狙われていたのは、私が可愛いからではないのですよ。逆恨みと救いを求めていたから狙われていたのですよ!?
アシュトン殿下も、笑いを堪えるように「そうではないから、安心しろ」と言っている。
その様子にこっちが恥ずかしくなる。
「アリス。君の入る隙はないな。これで諦めろ」
「……わかりませんわ。私のところに来るかもしれないですわよ」
「あり得んな。ノクサスが、こんなに慌てて女のところに来るのは見たことがない。女を可愛いと言ったのをみるのも初めてだ。2人の邪魔をするようなことをするな。無粋だぞ」
アシュトン殿下に、𠮟咤されるように言われると、ランドン公爵令嬢様の表情が硬くなる。
眉間にはシワを寄せている。スカートを握りしめている手はワナワナと震えている。
「とにかく、ダリアは連れて帰ります。次からは、公爵に頼もうとも、俺の許可なく絶対に来させません。ダリア宛に送らないでいただきたい」
そして、「帰ろう」と言って、私を傍らに抱き寄せて歩き出した。
アシュトン殿下は、ニコニコ笑顔で見送る。ランドン公爵令嬢様は、憤慨して邸に戻っていった。
ノクサス様に、いいのですか? と尋ねようと思うとギョッとした。
門に近づくにつれて、少しずつ護衛が周りを固めていっている。
一体いつの間に!?
「……ノクサス様。来てくださってありがとうございます……でも、これはなんですか!?」
「ダリアが、捕まっていてはいけないと思い、万全を期して来た」
「ノクサス様……職権乱用では?」
「ダリアの危機は一大事だ」
「危機ではなくて、お茶会ですよ? 招待状をお渡しするように持って行かせたはずですけれど……」
怖い……。私が、お茶会に来ただけで、こんなに騎士団が動くなんて!!
「だから、俺がすぐに駆けつけて、残りの騎士たちはフェルに連れてくるように手配して来た。抜かりはない。もう遅れを取るつもりはない」
そう言って、軽々と身体を持ち上げられて馬車に乗せられた。
「一緒に帰ろう」
「当然です。私の帰るところはノクサス様のところだけです……」
「それを聞いて安心した……」
そして、ほっとした表情のノクサス様と邸への帰路に着いた。
「……ロバートさん、チャンスですよ。メイドを引き留めていてください」
「何のチャンスですか……。大人しくしていてくださいよ。ノクサス様が心配しますよ。大体、どうやって引き留めるんですか?」
「そうですね……ロバートさんが、口説き落とすとか? 騎士様は、女性に人気の職業ですから、きっといけますよ。ロバートさんもなかなか整ったお顔ですし……」
「やめてくださいよ。落とせなかったらどうするんですか……しかも、仕事中にそんなことは出来ません」
「本気で落とさなくてもいいんですよ。引き留める間だけで……」
「……ダリア様から、離れたら問題です!」
ひそひそ話でロバートさんとそう話していると、メイドが「こちらです」と教えてくれた。
あっという間にお手洗いについてしまった。
どうしようか? と目の前を見ると、メイドがロバートさんをチラリと見た。
やっぱり騎士様は女性に人気だと確信した。
ランドン公爵邸に騎士様が、来ることはあっても、主人の客人とメイドたちがお知り合いになることは無いだろうし、公開訓練場では、令嬢たちだけでなく、平民の女性たちも見学に来ていたから、このメイドもきっと騎士であるロバートさんが気になってくれると思った。
「あの……すみません。いくら護衛とはいえ、お手洗いの前に騎士様にいてもらうのは……良ければ、どこかで、こちらのロバートさんと、待っていてもらえませんか? ロバートさんが迷っては困りますし」
メイドにそう言うと、若いせいか、チャンスとでも思ったのだろう。
あっさりと、了承し「近くの部屋でお待ちします」と言った。
「ダリア様。困りますよ!」
「大丈夫ですよ。すぐに戻りますから……一階のこの辺りだけ見るだけですから。頑張ってメイドと楽しんできてください。でも、節度は守ってくださいね」
「何の節度ですか……」
また、ロバートさんとひそひそと話すが、これ以上メイドを待たせられない。
強引かもしれないが、ロバートさんにメイドを任せて近くの部屋に行くのを確認して、私は、お手洗いに入らず、この辺りを歩いた。
もし、私の予想が当たっていれば、この邸に呪いの核があるはずだ。
ランドン公爵令嬢様が、部屋に隠しているなら、この辺りを探しても無駄だろう。
でも、魔法使いじゃないランドン公爵令嬢様に呪いを扱えるとは思えない。
そうなると、絶対にあの呪いの核に関わっている魔法使いがこの邸にいるはずだ。
……この邸に魔力を放ったら、どこかの部屋が反応するはず。
相手にバレるかもしれないけれど、私がしたとバレなければいいんだし……早く、見つけないと、ノクサス様の呪いはいつまでも解けない。
その時、後ろから声をかけられた。
「なにをしているんですか!?」
振り向くと、下僕の格好をした男性がいた。
見つかってしまった。
「すみません……迷ってしまって」
見つかってしまったと思い、迷子だという体で取り繕うとして、しおらかに謝罪した。
一応、公爵の招待状でやってきたお客様だから、これで下僕は突っ込んでこないだろう。
でも、様子が違った。
困ったように、横を向いた下僕の格好の男性は、はぁーーとため息を吐いた。
「ダリア様。ノクサス様が心配しますよ。ロバートとすぐにお茶会にお戻りください」
「……下僕の方ですよね?」
「ここではそうですが……ノクサス様の部下ですよ。秘密裏に動いているので、ダリア様は大人しくお戻りを……」
ノクサス様はすでに部下を侵入させていた。おそらくノクサス様の間者だろう。
やはり、騎士団のトップだから抜け目はなかった。
「でしたら、この邸に魔法使いはいませんか? 魔法使いがいればそこに呪いの核があると思うのですけれど……」
「……ランドン公爵令嬢が呪われていると思ってないのですか?」
「すごく元気ですし……以前から、ノクサス様の呪いを治すと言っていましたから……もしかしたら治せる確信があったのではと思うんです」
「ノエルでも治せなかった呪いを、治せる白魔法使いがいると?」
「ランドン公爵令嬢様の用意しようとしていた白魔法使いの能力はわかりませんが……確実に治せるのは、呪いの核をどうにかすることです。……ということは、ここに呪いをかけた魔物の核があると私は思っています。魔物の核があるなら、それを扱っている魔法使いがいても不思議じゃありません。だから、ランドン公爵令嬢様が用意しようとした魔法使いが持っている可能性があると私は思っています」
「魔法使いの部屋を探します。ついでに言うと、ランドン公爵令嬢様のお部屋には、そんな魔物の核はありませんでした」
やっぱり、ランドン公爵令嬢様は魔法使いじゃないから、ずっと呪われた核なんか持ってられないのだ。しかも、すでに探していたとは。仕事が速い。
「でも、ミストが穢れを見たと言ったから、必ずどこかで接触しているはずです」
「すぐに探しますから、ダリア様はお茶会にお戻りを……」
「わかりました」
そう言って、この間者に連れられてロバートさんとメイドのいる部屋に戻った。
ロバートさんは、この下僕の格好をした間者と顔見知りなのか、ギョッとしていた。
ロバートさんを睨んだ後、メイドに声をかけている。
「ここにいたことは秘密にしますから、お客様をお茶会にお連れになったほうがいいですよ」
「は、はい! すみません!」
私と慌てるメイドに、早くお茶会に戻れと言っているのだろう。
しかも、ノクサス様の間者だとバレないように、下僕の立場から言っているのだ。
メイドは仕事をサボって、騎士様と逢引きしているところを注意された気分だろう。
それでも騎士様と二人っきりが、貴重な経験だったのか、ロバートさんに熱い視線を送っている。
「……お話をしてくださりありがとうございます」
ロバートさんも、メイドに不快な想いをさせないためにか、そう言った。
しかも、笑みを浮かべていた。
騎士としての社交辞令の笑顔だろうか。それなりのマナーはあるのに、何故私の時にはそれを発揮させなかったのか。おかげで私は、あっという間に寿退社をしたのですよ。
「ダリア!!」
邸から、お茶会をしている外に出るといきなり名前を叫ばれた。
ノクサス様が駆け寄ってきている。
「ダリア! 心配した! お茶会に行ったと知らせをうけて……!」
「ノ、ノクサス様……! 苦しいです……」
力いっぱい抱きしめられて、顔がノクサス様の胸板で押しつぶされる。
「……来るのが遅くなって悪かった」
「来てくれるってわかっていますから、いいのですよ」
少しだけ力を緩めてくれたノクサス様と目が合うと、私のためにこんなに必死で来てくれた表情に照れてしまう。
そして、「何事もなくて良かった……」と言いながら、頬にキスをされる。
「何事とはなんですか? 何事とは……」
ノクサス様の後ろから、ランドン公爵令嬢様が必死で笑顔を作ろうとしながら歩いてきた。
「ノクサス。お茶会に来ただけで何をそんなに心配するんだ?」
アシュトン殿下は、本当になにがなんだかわからない感じだ。
ノクサス様の腕の中で彼を見上げると、不機嫌そのものだった。
「何故、アシュトン殿下までいるんですか?」
「アリスが、最近ご機嫌斜めだと公爵がぼやいていたから、心配で様子を見に来ただけだ。その時ちょうどノクサスの婚約者とお茶会をするというから、お邪魔させてもらったのだ」
「勝手に会わないでください。ダリアを見初められたら困ります」
ノクサス様、そんな方はいませんよ。
どう見たって、ランドン公爵令嬢様の方が美人ですよ。
「ノクサス様。アシュトン殿下は、ノクサス様の婚約者のお顔を知りたかっただけですよ」
「しかし、ダリアは可愛いからな。いつ、誰に見初められるか不安だ」
「そんな人はいません」
ノクサス様はわかっているのだろうか。私が狙われていたのは、私が可愛いからではないのですよ。逆恨みと救いを求めていたから狙われていたのですよ!?
アシュトン殿下も、笑いを堪えるように「そうではないから、安心しろ」と言っている。
その様子にこっちが恥ずかしくなる。
「アリス。君の入る隙はないな。これで諦めろ」
「……わかりませんわ。私のところに来るかもしれないですわよ」
「あり得んな。ノクサスが、こんなに慌てて女のところに来るのは見たことがない。女を可愛いと言ったのをみるのも初めてだ。2人の邪魔をするようなことをするな。無粋だぞ」
アシュトン殿下に、𠮟咤されるように言われると、ランドン公爵令嬢様の表情が硬くなる。
眉間にはシワを寄せている。スカートを握りしめている手はワナワナと震えている。
「とにかく、ダリアは連れて帰ります。次からは、公爵に頼もうとも、俺の許可なく絶対に来させません。ダリア宛に送らないでいただきたい」
そして、「帰ろう」と言って、私を傍らに抱き寄せて歩き出した。
アシュトン殿下は、ニコニコ笑顔で見送る。ランドン公爵令嬢様は、憤慨して邸に戻っていった。
ノクサス様に、いいのですか? と尋ねようと思うとギョッとした。
門に近づくにつれて、少しずつ護衛が周りを固めていっている。
一体いつの間に!?
「……ノクサス様。来てくださってありがとうございます……でも、これはなんですか!?」
「ダリアが、捕まっていてはいけないと思い、万全を期して来た」
「ノクサス様……職権乱用では?」
「ダリアの危機は一大事だ」
「危機ではなくて、お茶会ですよ? 招待状をお渡しするように持って行かせたはずですけれど……」
怖い……。私が、お茶会に来ただけで、こんなに騎士団が動くなんて!!
「だから、俺がすぐに駆けつけて、残りの騎士たちはフェルに連れてくるように手配して来た。抜かりはない。もう遅れを取るつもりはない」
そう言って、軽々と身体を持ち上げられて馬車に乗せられた。
「一緒に帰ろう」
「当然です。私の帰るところはノクサス様のところだけです……」
「それを聞いて安心した……」
そして、ほっとした表情のノクサス様と邸への帰路に着いた。