最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「君の荷物にリスクを背負うほどの価値があるとは思えなかったから、警察に任せるのを勧めた。だが正直言って、警察に頼んだところで無事に荷物が返ってくるとも思っていない」

つまり、最初から私をなだめる目的で『警察に任せよう』と言ったの?

――が、今は私の荷物に〝リスクを背負うほどの価値〟を見い出したということだろうか。

もしかして、母の遺影が入っていると知ったから?

「犯罪者が律儀に話を聞いてくれる保証はないが、彼らだって無駄に警察に追われたくはないはずだ。おいしい条件をちらつかせれば、交渉に応じてくれるかもしれない」

俄然やる気になって路地に乗り込もうとする男性の腕を、今度は私が掴んで引きとめる。

「いえっ、あの、大丈夫です! 危ないので、警察に任せましょう!」

いくらこの人が男性で、私より力が強いとしても、複数人を相手して無事に済むとは思えない。

私の荷物を取り返すために英国紳士風のイケメンがボコボコにされたなんて冗談じゃない。

身代金の三百万円も払えないし……!

「もういいんです! 遺影なんてまた印刷すれば済みますし!」

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