最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
『志遠。あなたが女性を幸せにするのは簡単よ。でも、あなたを幸せにしてくれる女性はきっと少ない』

『他人に幸せにしてもらおうだなんて、考えてはいないよ』

『こう質問してみるといい。【あなたのほしいものはなんですか?】と。【なにもほしくない】と答えた女性が、きっとあなたを幸せにしてくれる』

いったいどんな言葉遊びだろう。なぜ母がそんなことを言ったのか、言葉の裏にどんな意味があったのか、今でもわからない。

小馬鹿にしながらも、俺は幾度かその質問を女性に投げかけたことがある。

ひとりめはジュエリーと答え、ふたりめは車と答えた。他にも家や仕事と答えた女性もいた。

だが、【なにもほしくない】と答えた女性はいまだひとりもいない。

同じ質問を陽芽にするとは。俺はなにを考えているのだろうか。

ただ、これまでの女性たちとは違う答えが返ってきそうで、ほんの少しだけ期待している。



翌日、俺たちは軽い朝食を済ませると、陽芽の両親が住んでいたというアパートメントに向かった。

車で行けば早いのだが、それでは味気ないからと、陽芽は自分の足で行くことを希望した。俺と陽芽は電車を乗り継ぎ、目的の住所に向かう。

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