最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
どうやら彼女は陽芽のご両親と面識があるらしい。

陽芽に近寄ってまじまじと見つめると『似ているような気がするわ』と言って口角を跳ね上げた。

女性が友好的だったことに安堵し、俺はざっと事情を説明する。

陽芽の両親はすでに亡くなっていて、彼らの思い出の地を訪ね歩いていること。

バッグの中の遺影を見せると、女性は『まぁ……』と口もとを押さえて涙ぐんだ。

『まるで運命だわ。ついてきて。あなたに見せなければならないものがあるの』

そう言って彼女は俺たちをアパートメントの中へ招く。

きょとんとする陽芽に「見せたいものがあるそうだ」と通訳すると、瞳をきらきらと輝かせて女性についていった。

『私の名前はイザベル』

自己紹介くらいは聞き取れたらしい、陽芽はたどたどしい発音で『I'm Hime Kikumiya』と名乗る。

中は広めのリビングとダイニングキッチン、そしてベッドルーム。ふたり暮らしをするには充分な間取りだ。

ちなみに、日本の家はウサギ小屋などと呼ばれているが、イギリスの住宅もほかの欧米諸国に比べて同じくらい狭い。

なにより、ロンドンは物価の高さで有名である。

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