最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「そういう問題ではないだろう、物理的にどうこうではなく精神の問題だ」

「無宗教なので大丈夫です……!」

もしかして彼はどこかの宗教の敬虔な信者で、死者の写真をものすごく大切に扱う文化だったりするのだろうか。

いずれにせよ、危ないことはやめた方がいい。全身全霊で男性にしがみついて引きとめる。

「あなたに怪我をさせたら、むしろ母が怒ります!」

その言葉を聞くと、彼はようやくあきらめがついたのか立ち止まった。

「……わかった。警察に任せよう。ちなみに、パスポートは無事か?」

私が首を横に振ると、彼は「大使館にいかなければな」とため息をついた。



彼が通報してくれたおかげで、ほどなくして警察官二名がやってきた。

会ってすぐ身分証を提示してくれたので、今度こそ本物の警察官と見て間違いない。

それにしても黒髪の男性に対してとても恭しく接しているように見える。海外の警察官って、こんなに腰が低くて礼儀正しいものなのかな?

「君。名前と住所、滞在日数を教えてくれ。滞在目的は旅行でいいんだよな」

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