最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
俺はどんなに努力をしようが、彼女のようにはなれない。なる必要もない。

足りないものは補い合うべきだ。

「俺が君の代わりに疑ってやる。だから君はそのままでいろ」

「それはどういう……?」

どういう意味かは、俺が聞きたいくらいだ。

……冗談じゃないぞ。俺はいったいなにを考えて――。

思考の末、たどり着いた信じられない結論に、口もとを覆う。

よりにもよって、陽芽を? 俺は本気か?

目の前にちょこんと腰を下ろすあどけない彼女をまじまじと見つめる。

『人間は自分に欠如しているものを補完するためにパートナーを選ぶ』――それはかつて自分で導きだした答えだ。

その理論でいけば、彼女は誰よりも俺のパートナーにふさわしいということになるのだが――。

「志遠さん? どうかしましたか?」

「いや……ちょっと、自分で自分が信じられなくなってきた」

彼女はさっぱりわからないという顔で首をかしげている。

……不本意ではあるが、俺と陽芽の関係は理に適っている。

亡くなった母のために遠い異国の地にやってきた彼女。そんな彼女のことが嫌いではない。その純粋な気持ちを大切にしてやりたいと思う。

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