最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「……とにかく。俺の傍にいる限り、お前はそのままでいい」

結論を濁すような説明に、彼女はふっと笑みを漏らした。

「じゃあ、私がイギリスにいる間は、このままでいいってことですね」

俺は答えることができず、沈黙した。彼女が帰国するまで、あと三日足らず。

無事日本まで送り返せば、俺はお役御免。もう二度と会うこともないだろう。

このままで……いいのか、俺は?

自分の胸に生まれ始めたとんでもない考えに、半信半疑のまま閉口した。



翌日の土曜日。俺は仕事に向かい、陽芽の世話はダリルに任せた。

事あるごとに携帯端末のバイブが鳴る。送られてきたのはまた陽芽の写真だろう。見なくてもわかる。

今日も彼女たちはロンドン観光を満喫しているらしく、陽芽はとびきりの笑顔を浮かべていた。

一枚目の写真を見た時点で仕事への意欲が削がれ、それ以降はチャットアプリを開かないようにしているのだが――いかんせん平静でいられない。

陽芽の警戒心のなさは長所だ。ダリルのことをこれっぽっちも疑わず身を任せきっているのは、彼女のよさでもあるのだと、わかっているのだが。

「恋人以外の男にそんな顔をさらすんじゃない……!」

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