最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
予想通り、陽芽の写真が並んでいる。

笑顔のものもあれば、少々憂いを帯びた表情のものもある。やはり昨夜発覚した、恋人が詐欺だった件を気に病んでいるのか。

……心配だ。陽芽は自覚こそないが、傷ついている。精神的ケアをきちんとしてやるべきだった。

チワワ相手にこんなヤキモキした感情を抱くとは思えない。やはり陽芽は女性であり、ペットではない。

なら、俺は陽芽を愛しているのか? 異性として、恋人として見ることができるのか。キスしたいと、抱きたいと思えるのか――。

まるで自身の首を絞めるかのように自問自答する。

……そりゃあ、愛を注げばかわいらしく笑ってくれるだろう。彼女はそういう人だ。

甘い言葉をかけたなら、いつもとは違った表情を見せてくれるかもしれない。はにかむ陽芽も見てみたい気がする。

恋人といるときはどんな顔をするのか――じわじわと彼女への興味が湧き立ち、気付けば妄想にのみこまれていた。

触れてみたい、突然そんな思いに駆られ、自らを制御する自信を失くす。

今彼女がダリルとふたりきりでいることを思うと。焦燥にかきたてられる。

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