最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
志遠さんは『俺の傍にいる限り、お前はそのままでいい』と言ってくれた。

あの言葉はとてもうれしかった。自分を肯定してもらえたような気がしたからだ。

山内さんにかけられた優しい言葉の数々よりも、よほど胸に響いた。詐欺師を超えるフレーズがさらりと出てくるなんて、さすがは英国騎士。

でも、その言葉が効力を持つのはロンドンにいる間だけ。今日を含めてあと三日だ。

そう思うと、少しだけ寂しくなってしまう。

「……もちろん。満喫させてもらっています」

「それはよかった」

ダリルは人好きのする笑みを浮かべて、ケーキスタンド下段のスコーンに手を伸ばした。私も気持ちを切り替えるべく、タルトを口に運ぶ。

アフタヌーンティーを堪能し終える頃。

ふとホテルの入口からこの庭園に向かって、スーツ姿の男性が歩いてくるのが見えた。

背が高くすらっとしていて、気品漂う立ち姿は志遠さんにそっくりだ。少しだけドキリとしてしまう。

それどころかさりげなくチェック柄が施されたチョコレートブラウンのスーツは、彼が今朝着ていたものにそっくり――って、ええ? あれ、本物の志遠さんじゃない?

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