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やがて警察官へ説明を終えた彼が「着いてきなさい」と言って手招いた。

路肩に止まっていた黒くて艶々したボディの、みるからに高級な車に案内される。

たしかに聴取を受けている間、こんな高級車がどうしてここに長時間停まっているのだろうと不思議に思ってはいたのだが――。

「まずは大使館に行く。乗りなさい」

まさか彼が乗ってきた車だったなんて。

彼が車に近づくと、すかさず運転手が降りてきた。ドアを開けてくれようとしたのだろう。

しかし、彼は運転手を手で制し、自ら後部座席のドアを開け、私をエスコートした。慣れた仕草はなんだか本物の紳士のようだ。

警察の聴取にも付き合い、さらには大使館まで送り届けてくれるという。異国の地で親切な紳士に出会えたことは本当に幸運だった。

「ご迷惑をおかけして申し訳ありません。重ね重ねありがとうございます」

頭を下げて感謝を述べると、彼は車に乗るのを促すように、私の腰に手を回す。腰骨のあたりに触れられ、内心ドキリ。

「話は中で。人が集まってきた」

甘いささやき声、真横には美貌。英国で女性をエスコートするのは当然、社交辞令と言ってもいいのだが、それでも心臓に悪い。

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