最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
しかも、車に乗り込むとそこは想像以上に豪勢な空間が広がっていて、私は思わず「わぁ」と感嘆の声を漏らした。

ゆったりとした座席が向い合わせに配置されており、サイドにはグラスホルダーがある。移動中、ワインでも飲むのだろうか?

上質な革の座席は、クッションが体にフィットして座り心地抜群。長時間の移動でも腰が痛くなることなんてないだろう。

ドキドキしながら座っていると、男性が私の正面の席に深く腰をすえた。

男性の脚は驚くほど長いが、広々としているおかげでぶつかる心配もなさそうだ。

こんな車に乗っているなんて、彼は本当に超有名人、あるいは大金持ちなのかもしれない。

まさに捨てる神あれば拾う神あり、こんなところでお姫様体験ができるとは。

もちろん全財産、加えて遺影を失ったことはショックだけれど、いつまでも落ち込んでいても仕方がない。この瞬間をポジティブに楽しもう。

運転手が後部座席のドアを閉める。

すると男性は「まず、ひとつ言わせてもらってもいいか」と、外にいたときよりも三トーンぐらい低い声を発した。

ふと見れば鋭い眼差し。不穏な空気を感じ取り、直感がまずいと警告する。

< 15 / 272 >

この作品をシェア

pagetop