最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
第六章 騎士の宿命と獰猛な情愛
志遠さんがエレノアさんとともに姿を消して、十分くらいが経っただろうか。

一階に残された私は、ダリルとともに笑顔を作りながらなんとかその場をやり過ごしているのだけれど――。

……なんだかすごく嫌な気持ち。

自分でもなぜこんなに苦しいのかわからない。

そばにいると言ってくれたのに、行ってしまったから?

ううん、志遠さんが社交をするのは、お仕事のようなもの。ちゃんと理解はしている。

じゃあ、志遠さんの婚約者であるエレノアさんが、胸の大きな金髪美女だったから……?

そんなことで気持ちがかき乱されるなんて、私はいったいどうしてしまったのだろう。

「おとなしく〝待て〟ができて、ヒメはえらいですねぇ」

ダリルが茶化すように言ってくる。

「志遠さんの迷惑になってはいけませんから」

「一途だなぁ。今頃、シオンとエレノア様はいいことをしているかもしれないのに」

ぎょっとして私はダリルを見上げる。

彼はしれっと人懐っこい笑顔を浮かべて私を見つめ返した。

「サロンって、そういう場所なの!?」

「いえ。サロンは単なる談話室ですけど。素直にサロンに行ったと思います? 賭けましょうか?」

そう言って、ダリルは螺旋階段を指差す。実際にサロンに行って確かめてみようということだろうか。

「今頃、ふたりは客間にいるんじゃないかな?」

< 152 / 272 >

この作品をシェア

pagetop