最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
ダリルの手を取り、私は螺旋階段を上がる。

「もっぱらの噂なんですよ。エレノア様は気に入った男がいると客間に連れ込んでおイタをするって」

「おイタ……って?」

「俺に詳しく言わせます?」

つまり……そういうこと?

胸の奥がぞわぞわとして落ち着かない。

まさか、あの生真面目な志遠さんが、こんな大勢が集まる場所でそんな誘惑に応じるわけがない――そう信じながらも絶対にないとは言い切れないと怖くなった。

伯爵の娘さんに言い寄られて、志遠さんはきっぱりと断れるのだろうか。

あんな美人な女性に豊満な胸を押し付けられて、その気にならないと言える?

「エレノア様は十代の頃からそんな感じだそうですよ。まったく、女って怖い」

二階へたどり着いた私たちは、左手にあるサロンへ足を運んだ。広々とした部屋に、ソファとテーブルがいくつか並んでいる。

しかし、志遠さんとエレノアさんの姿は見えない。

やはりここにはいない――胸の奥に燻っている不安が、どんどん大きくなっていく。

「……少し、探してみましょうか?」

ダリルはそう言って談話室を出ると、隣の部屋へと向かった。

私は思わずダリルの手を掴み引きとめる。

< 153 / 272 >

この作品をシェア

pagetop