最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
どうせ明日には帰国するのだ。このままうやむやにして志遠さんと別れてしまえばいい。

そう自分に言い聞かせ、キャミソールとショートパンツの上にガウンを羽織り客間のドアを開けると、ドアの前に志遠さんが仁王立ちしていて、私はひくりと息が止まった。

予期せず目が合ってしまい、逸らせなくなる。

「陽芽。話がある」

「……シャワーを浴びてからでもいいですか? 早くメイクを落としたくて」

私は志遠さんから逃げるように、バスルームへと飛び込んだ。

勢いで来てしまったから下着もなにも持ってきておらず、私は頭を抱える。

「私、なにしてるんだろう……」

部屋に取りに戻ろうとしたとき、バスルームのドアががちゃりと開いた。

「し、志遠さん、勝手に入ってくるなんて! 私が脱いでたらどうするつもりですか!?」

「手ぶらでシャワーを浴びにきたのか? どうせまだ入るつもりがなかったんだろう」

そう反論すると、彼は私の手を引いて強引にリビングに連れていき、ソファに座らせた。

「陽芽。俺がいない間になにがあった」

志遠さんはすぐ隣に腰かけ、鋭い眼差しで尋ねてくる。

やはり真正面から向き合うことはできなくて、ふいっと目を逸らした。

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