最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「なんのことです?」

「とぼけないでくれ。パーティーで俺が席を外したときから、君の様子がおかしい」

私が膝の上で揃えていた手を、志遠さんがきゅっと包み込む。ちらりと目線を上げてみると、真摯な目が私をじっと見つめていた。

「もしかして疑っているのか? 俺とエレノアの関係を」

「……っ、どうでもいいです。私には……」

「なにもないよ。俺はエレノアには興味がない」

「興味ないなら、なんでっ……」

思わず文句を言いそうになって、慌てて言葉をのみこむ。

私が口を出すようなことじゃない。これは彼の家や名誉にもかかわる問題なのだ。

しかし、志遠さんは私のことをじっと見つめたまま、視線を外さない。

「言ってくれ、陽芽。でないと、俺はなにを弁解したらいいのかわからない」

私は大きく首を横に振る。弁解されたところで、きっとこの複雑な気持ちは――嫉妬は消えない。

密室で女性とふたりきりになり、外に出てきたときには服が乱れていた。なにを言われてもその事実は揺るがないのだから。

しかし、志遠さんは私の口を割ろうと、ソファの背もたれに手をつき圧力をかけてくる。

「なにも文句がないなら――」

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